防災意識を育てるWEBマガジン「思則有備(しそくゆうび)」

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帰りたいのに帰れない・・・帰宅困難者問題の今

time 2007/09/04

帰りたいのに帰れない・・・帰宅困難者問題の今
帰りたいのに帰れない・・・帰宅困難者問題の今  [編集長コラム]
 
東京直下大地震(南関東地震 M6.7〜7.2)の30年以内の発生確率が70%、と国により試算されているのをご存知だろうか?
※参考⇒ http://www.sei-inc.co.jp/bosai/kaikou/
 
6,400人の犠牲者を出した1995年の阪神淡路震災では、地震発生前に政府から、30年以内の神戸の地震確率を約8%とする見解が出されていました。
東京の70%という発生確率がどれだけ大きなものか、よく判る例でしょう。
(ちなみに東海地震の確率は87%と発表されている)
 
この発表を受け、政府や東京都などでは、<地震は必ず来るもの>として、減災・震災対策に本腰を入れて取り組むことになった。
その対策の大きな柱が、帰宅困難者支援問題 なのです。
 
 
2004年に政府(内閣府)は、首都直下地震の被害想定を以下のようにまとめました。
 
東京西部(M6.9)や東京北部(M7.3)で大きな地震が発生した場合、最悪で、死者1万3000人(火災で6,200人)を出し、85万棟の住宅が全壊、一都三県で650万人の帰宅困難者が発生し(帰宅困難者:東京 390万人, 神奈川 110万人,千葉 82万人,埼玉 67万人)震災後1日で700万人が被災者となる。
避難所での生活者は約460万人に達し、地震から1ヶ月経てもなお270万人が避難所暮らしを余儀なくされる。
 
余談ですが、この記事を読んで他の地域の人が「対岸の火事」と思わないように付け加えるならば、2006年に大阪府でも、死者1万2000人、178万人の帰宅困難者が発生すると、大阪直下地震の被害想定が発表されているのです。
 

で、昨年、東京都は、都内で390万人としていた従来(2004年)の想定より、帰宅困難者が58万人多い 448万人 であると改訂しました。(近いうちに政府の想定も上方修正されるかもしれない)
 
2006年の東京都防災会議でのシミュレーションによると都内の14万5千台のエレベーターの6%にあたる9,200台に人が閉じ込められる。
地震により緊急停止したエレベーターは、実は、作業員がかけつけ復旧作業しなければ運転再開ができないのです。
 
電力の回復に6日間、電話など通信に14日間、水道(下水道)が30日間、ガスの復旧に53日間かかる。
羽田空港は液状化により、AC滑走路が使用できず、鉄道は663ヶ所が被害を受け、特に大きな被害を受けた28ヶ所は復旧まで長期化する。
 
――――そして、帰りたいのに帰れない人が発生する。
 
地震直後、道路や鉄道など交通網は寸断する。
仕事をしていた人、たまたまショッピングに来ていた人、学生などなどが、急な震災により、東京駅に20万人、渋谷駅に18万人など合計 1,144万人 もの人たちが都内で足止めされる。
 
この1千万人を超える都内の帰宅困難者予備軍の人たちは、時間の経過と共に、しょうがなく徒歩で家に帰る人が出て、徐々に減っていくが、それでも<ターミナル駅周辺には滞留し続ける>帰宅困難者たちがいる

主な駅の滞留者の人数を列挙すると

    東京駅 14万2400人

    新宿駅  9万 600人

    品川駅  8万9100人

    渋谷駅 10万3600人

    池袋駅  8万4800人

    上野駅  4万4200人

    八王子  1万7400人

    町田駅  2万8300人

など合計 448万人 である。
 
ここで注意して欲しいのは、地震直後、交通機関がストップしたために一時的に足止めされた約1千万人の人たちはいわゆる「 帰宅困難者 」には含まれていないこと。
つまり、国や行政が主として想定している帰宅困難者とは、ターミナルに滞留している「帰りたいのに帰れない」人たちを指すのです。
 
例えば、私の住んでいる神奈川県横浜市では、東京都内で帰宅困難に陥る横浜市民を47万人と見積っている。東京から横浜は数十キロと離れており、道路に亀裂が入り、建物が倒壊した状態では、そう簡単に歩いて帰ることはできないでしょう。
 
膨大な数にのぼるターミナル駅周辺の帰宅困難者。
従来までのJRなど鉄道対応マニュアルでは「乗客を駅構内から外に避難させることを原則」としていました。
しかし、誘導時の混乱や混雑により 圧死者 も出かねないとして、現在、検討会が設けられ、当面の待機場所(一時避難場所や一時宿泊所など)を確保するよう新たな取り組みも協議されています。
 
更に、新たな取り組みとして、企業が水や食料の備蓄を行うことで、帰宅できなくなった社員を会社に何日か泊まらせて、地震直後に帰宅困難者でもっとも混雑する期間を乗り切るという対策を行うことも推奨されています。
 
また、帰宅困難者に対して水・食料、トイレ、休息の場、沿道情報を提供(地図やラジオなど情報提供や道案内)する「帰宅支援ステーション」としての役割で、学校、ガソリンスタンド、コンビニ、ファミリーレストランなどを一時休憩所とする方法が期待されています。
 
ただ、これらの場所で働く人たちの多くが一般市民であり、また、国民の命を守る行政側の人たちも同じ被災者である・・・ということを忘れてはなりません。
 
 
先日の8月31日の日経新聞に、帰宅困難者について言及された記事ではなかったのですが、明治安田生命の行った防災アンケート結果が小さく紹介されており興味を覚えました。
 
記事によると、震災時に優先的に行動することで「家族の安全確認」と答えた人が87%いて。震災時に頼りになる人は?の問いでは「家族」と答えた者が81%と最多。
家族を心配し頼りにするのは当然ではあるものの、しかし、7割以上の人たちが、地震発生で連絡が途絶した場合に「家族と落ち合う場所を決めていない」のだという。
「避難場所を確認した(15%)」「家族との連絡手段を決めた(18%)」「家族が落ち合う場所を決めた(18%)」は少数であったというのである。 

いつ起こるか分からない大規模地震災害。
考えて欲しい、あなたが、日常生活の中で、家族と一緒にいる時間はどれくらいあるだろうか?

7割がサラリーマンという日本の社会システムでは、四六時中、家族全員がそろって暮らしている人は稀なのではないでしょうか。
 
だから、地震に巻き込まれたら、家族がばらばらになってしまったら・・・家族の安全を考えるならば、最低限、家族で連絡方法を話し合って欲しいといつも思います。
 
以前にも書きましたが、人は心理的に危険を過小評価してしまうもの。
だから「自分は関係ない」や「めったに起こらない震度7や震度6強の大地震での話なんでしょ」と思いがちなんですが、東京都の防災会議では、東京を震度5強のやや強い地震が起こった場合であっても、都内の主要8駅で約60万人が足止めされ、東京駅の帰宅困難者は最大の約14万人に上ると想定しているのです。
 
2005年7月23日(土)夕方16時35分に発生した千葉県北西部地震では、足立区で震度5強を記録しました。
この地震の死者はゼロでしたが、東京メトロ、東京モノレール、東武東上線、東武伊勢崎線、東武野田線、山手線、京浜東北線、横須賀線、中央線(東京〜高尾)、東海道線(東京〜熱海)、常磐線(上野〜取手)、総武線(千葉〜三鷹)、総武線快速(千葉〜東京)・・・と都内を走る全ての電車が4時間から7時間も運休し、足止めされた人たちが都内の駅にあふれ、徒歩で帰宅する人々の群れという一種異様な光景が起こりました。
 
何も、命にかかわる未曾有の大地震だけが、私たちが対策すべき災害ではありません。
局地豪雨で電車が止まり、しょうがなくタクシーで帰ったという経験は意外に皆さんあるのではないでしょうか?
2005年7月の地震のように、ちょっと大きな地震に遭遇し、局地豪雨の時よりも広域で同時多発的に交通機関がマヒして、それに、自分や家族が巻き込まれるかもしれないと、想像してみることも防災の一歩なのです。

■この記事に関連する防災格言内の記事
 帰宅困難者と「きつねのおきゃくさま(創作絵本)」から災害ユートピアを説明する(2011.03.28 編集長コラム)

<編集長 拝>

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