日本では、多くの地域で公園が設置されていますが、公園が災害時の避難場所として、どのように指定されているかをご存知でしょうか。中には、防災公園という災害時に重要な役割を果たすよう整備されているものもあります。しかし、どのような機能があるのかを知らないと、いざという時に活用できません。防災公園がどのような場所かを理解して、もしものときに備えましょう。
防災公園は避難と救助の拠点になるスペース
大規模な地震などの災害が起こったとき、多くの公園が避難場所となります。そのため、すべての公園を防災公園と言うこともできますが、防災公園とは都道府県や市町村が「地域防災計画」の中で避難場所としてあらかじめ指定している公園や緑地のことを指します。避難場所だけではなく、救助活動の拠点となる機能が備えられている場合もあります。
具体的にどのような機能があるのでしょうか。例えば地震による火災が発生した場合、住宅の延焼につながり被害が大きくなることがあります。しかし、公園はスペースが広いため延焼しにくく、避難した人の二次災害も防ぐことができます。
そして、防災公園には、被災者のための水や食料、衛生的なトイレといった設備が設けられているものもあります。本格的な救援が始まるまでの間、食事をとって落ち着けるようになっています。
また、防災公園は救援活動をする拠点でもあります。それを象徴するのがヘリポートです。大規模災害時には倒壊物で道が通れなくなったり交通機関がまひしたりする可能性が高くなります。そうした場合に、ケガ人や食料を運ぶ方法として利用されているのがヘリコプターですが、防災公園では、競技場などに使われているスペースをヘリポートとして利用できるようにしているのです。
防災公園も普段は住民の憩いの場ですが、防災設備がそろっていることから防災訓練の場所にもなっています。
実際に消火器を使ってみるといった訓練以外にも、公園内に備えられた防災設備の使用方法や避難時に取るべき行動などを学ぶことができます。このように、災害時に落ち着いて行動できるよう、日頃から意識的に備えられるという役割も防災公園は果たしているのです。
設置されている防災設備
防災公園に設けられた防災設備には、かまどベンチやマンホールトイレ、給水槽などがあります。かまどベンチは、公園内のベンチがかまどとしても利用できるもので、ベンチの座るところを外すと、鍋が置けて下で火を燃やすことができます。また外した木枠はテーブルとして使用できます。水道が使えなくなった場合も給水槽の水を利用し煮炊きでき、温かいものが食べられます。
マンホールトイレは、公園内の下水道管上のマンホールを活用したものです。非常時にマンホールのふたを取って便器をはめれば、衛生的な仮設トイレになります。利用の際にはテントが張られるため、プライバシーも保つことができます。
トイレは不衛生だと病気のもとになるため、避難時には重要な機能です。他にもソーラーパネルによる照明など、避難してきた人を支援できる施設が防災公園にはそろっています。
全国的に増えている防災公園
東京都内では、都市公園の多くが防災公園に指定されています。東京都公園協会によると、防災公園は61公園あり、「避難場所」が58公園、そのうち21の公園が「大規模救出・救助活動拠点」となっています。
「大規模救出・救助活動拠点」は、被災者の救出や救助をするための拠点になれる公園です。避難場所としてだけでなく、災害の規模が大きくなることが予想される地域の近くで、
なおかつヘリコプターが発着できるスペースを確保できるなどの条件を満たせる場所が候補となります。
「避難場所」に指定される公園は救出や救助活動の拠点にはなりませんが、多くの人々を収容できるだけのスペースが確保されている場所です。また医療用ヘリコプター緊急離着陸場の拠点となる公園もあり、こちらで発着するヘリは主に医療関係となります。重体の患者や医療物資を運ぶヘリが利用できるスペースを確保するために、病院の近くの公園が選ばれるのです。
防災公園は全国的にも増えてきていますが、まだ、一般的に知られるようになったとは言えません。2016年の熊本地震では、被災者が防災公園に避難してきたものの、かまどベンチの機能を知らなかったため、活用されなかったケースも起きています。
熊本地震を教訓に、公園を管理している自治体が、地元の消防や町会と一緒に公園機能を利用した訓練を行うことも多くなりました。
このような訓練は、避難方法を知ることができると同時に、防災公園の機能に触れられるチャンスでもあります。せっかく災害時に備えて用意されている施設ですから、理解して有効に活用しましょう。