全国的に強烈な猛暑日が続いた2018年の夏。7月23日には埼玉県熊谷市で観測史上最も高い41.1℃を記録したのをはじめ、8月6日には下呂温泉で知られる岐阜県金山で41.0℃を観測するなど全国各地で40℃級の高気温を軒並み計測。この暑さにより、7月の東京23区だけでも71人が熱中症などによって命を落としました。このまさしく殺人的な暑さに対して、気象庁はついに猛暑を「災害」と認識。また、日本救急医学会からも医学的な見地からの提言が発表されるなど、猛暑は単なる気温の高さとしてではなく、私たちの健康を脅かす具体的な脅威として認識されつつあります。世にいう「亜熱帯日本」の実態と、それにより起こりうる私たちの生活の変化について考えます。
気温の最高記録を更新。その背景とは?
かつてないほど暑い日が続く日本。「地球温暖化の影響」というややもすれば漠然とした原因についてばかり指摘されていますが、はたして具体的にはどのような理由でこの猛暑が起きているのでしょうか。
まず気温を紐解くにあたって注目すべきは気圧配置です。
■図A/典型的な夏型の気圧配置
これまで一般的に、日本の夏の気圧配置といえばこちら(図A)。日本の南または南東海上に太平洋高気圧があって日本付近を覆い、大陸が低気圧となっている、いわゆる“南高北低”の気圧配置です。
これに対して、今夏の気圧配置がこちら(図B)。
■図B/2018年夏の気圧配置
ご覧の通り例年であれば大陸低気圧があるべきスペースに、太平洋高気圧とは別のもう1つの高気圧「チベット高気圧」があるのが分かります。
このように太平洋高気圧とチベット高気圧という2つの高気圧に覆われた状態を「ダブル高気圧」と言います。高気圧は地表に向けて下降気流を発生させますが、その際に空気を圧縮するため熱を帯び、それが熱さの原因となりますが、ダブル高気圧の場合、これがさらに強まります。そのためこのような暑さとなったのです。
「日本の気候は亜熱帯に変わった」という声も
さて、2018年夏に象徴されるかつてないほどの猛暑を受けて、しばしば耳にするようになったのが「日本の亜熱帯化」です。地球温暖化などによる気候の変化によって、日本の気候が亜熱帯気候に変化しつつある(あるいは変化した)という説です。
もし、本当にそうなったとしたら私たちの生活にはどのような変化があるのでしょうか? 「亜熱帯」と聞いて多くの方が最初に思い浮かぶであろう沖縄の気候を例に挙げて考えてみましょう。
※当コラムをお読みの方の中には沖縄・離島地域に住まわれている方もいらっしゃるかもしれませんが今回は「本土からの視点」としてお話しさせていただきます。何卒ご了承ください。